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日本の子供たちに伝えたい本物の旨み【二神友英】

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f1鰹節取扱量日本一

2013年に世界文化遺産に登録された「和食」

その要ともいえる「出汁」の元となるのが鰹節です。

鰹節のルーツをたどると、今から約1300年も前までさかのぼります。

日本人の食文化に深く根付いた鰹節。その鰹節の取扱量日本一を誇るのが、東京都大田区にあるマルサヤです。

 


fmap常に本物にこだわる

「創業者でもある父親から『常に本物にこだわりなさい』と言われていました。『せっかく漁師さんたちが命がけで獲ってきて、職人さんが苦労して作りあげた鰹節なのだから、手入れをしっかりおこない、最高の状態に仕上げてお客様にお届けしなさい。』って。私が品質にこだわるのは、昔から父親の真面目な仕事を見てたからかもしれません。」

そういって答えてくれたのは、マルサヤの三代目社長:二神友英さんです。

二神さんがマルサヤに入社して、最初の仕事が鰹節の行商だったそうです。

「徹底した現場主義だった父親の教えでね。朝出社すると、荷台いっぱいに鰹節が積まれたトラックが用意されていて『これを売ってくるまで帰って来るな』といきなり言われて…
とにかく売り切らないと戻れない訳ですから、お客様の自宅にまで行ってお願いして、なんとか売り切る日々でした。」

 

f2そんな現場主義を仕事の中で身に付けた友英さん。

仕入れ部門を任されるようになってからは、北は北海道の利尻から南は鹿児島の枕崎に至るまで、それこそ全国の港に足を運び、生産者と直接交渉にあたったそうです。

「産地によっては、こちらが挨拶をしても、まったく相手にされませんでした。しかし毎日根気強く、明るく元気な声で挨拶していると、生産者の方も少しずつ心を開いてくれて、『おう』なんて答えてくれるんです。それが嬉しくて、産地を回るのが楽しみになりました。」

 

 

 

f3経験に裏打ちされた直感

全国の港を回り、生産者の方と交流を深めるのと並行して、友英さんは鰹節の目利きを父である英明さんから学びます。

鰹節の良し悪しは脂の多少や空洞の有無などによって決まります。

鰹節を折って、中身を見れば分かりますが、そうすると商品価値がなくなってしまいます。

そのため、外見から判断するのですが、皮目や筋、音など目利きのポイントの他に、大事なのは「インスピレーション」とのこと。

「鰹は煮て鰹節にすると縮みます。しかもカビ付けしてしまうと、元の魚の状態は分からなくなるので、私たちは節の状態で魚体をイメージして、カビの色で何年経っているか判断しながら目利きをおこなうのです。

 

 

 

f4私は、何本かの節は見ただけで、○○さんが作った鰹節だというのが分かります。鰹節を作れる職人さんは全国に20数名しかいません。職人さん一人一人の切る癖があるんです。

ですから、○○さんが何年前に作ったやつだとあそこの海域だから、その年の鰹の状態を考えて良し悪しを見極めています。」

「インスピレーション」の根底には、何十万本もの鰹節を見てきたという経験が裏打ちされています。

 

本枯本節へのこだわり

友英さんに、実際に鰹節が保管されている倉庫へ連れて行っていただきました。

倉庫内には所狭しと鰹節が山積みになっています。

 

 

f5「鰹節だけで常時15000ケースくらいはあります。多分人の手で作った鰹節は、我々が一番多く持っていて販売していると思います。

鰹節はもともとの節をどう選定するかがポイントです。
鰹節に使う鰹は脂があると雑味が出てしまうため、鰹節には向きません。逆に脂が全くないのもコクが出ないため不向きです。

鰹も網で獲るのと、一本釣りで獲るのでは品質が違います。

一本で釣った方が傷もないので、一般的には良いとされていますが、獲れた場所や時期によっては、網で取った方が良かったりするので、臨機応変に仕入れをおこなっています。

捌いた鰹を煮て燻した鰹節を荒節といいます。枯節の元になるものです。

この荒節にカビ付けをして半年ほど保管すると枯節、みなさんがイメージする鰹節が出来上がります。

枯節ができたてから2年くらいは毎月味が変わります。
今月最高と思っていても、来月味を見ると変わっているなんてことは日常茶飯事です。

品質が本当に安定してくるのは2年~3年経った枯節です。」

 


f6長い年月と職人の腕が作り出す「宝石」

そう言って、見せていただいたのは表面を茶色いカビが綺麗についた本枯本節。

友英さんが枯節を2本持って叩くと、コンコンと良い音がします。

少し強めにコーンと叩くと、パキッと折れて、ルビーの宝石のような断面が姿を表しました。

「脂がある鰹節は強く叩いても折れません。またカビ付して半年ほどしかたっていない鰹節は水分があるので綺麗に折れません。年月をかけてしっかり枯らしているので綺麗に折れるんです。ちょっとなめてみてください。」

言われるがままになめてみると、美味しい鰹の味がフワ~っと口の中に広がります。

「ここまで枯らすまでに、2年の間寝かしておかなければなりません。カビは寒くても暑くても死んでしまうので、温度管理をおこないます。そして、ときどき倉庫から出してカビの付き具合を確認して、手入れをしてやる必要もあります。場所も取るし、費用もかかります。今からこの仕事をやろうと一から始めても、とても採算が合うものではありません。我々が五十数年間積み重ねてきたので、この鰹節が出せるのです。」

ルビーのような美しい輝きを放つ断面。

本枯本節二年物は、長い年月と職人の腕が作り出す「宝石」なのですね。

 

f7「ここ10年の間に、何社かの方が本枯本節の2年物を販売していたことがありました。だけど皆さん手間とコストがかかりすぎるので長くは続きませんでした。『お前のところ良くやってるなぁ。悔しいからやってみたけど(採算が合わなくて)バカバカしいね』と言われたことがあります。でも、採算が合う、合わないじゃなくて、美味しいか美味しくない、自分が売りたい売りたくないの世界ですから。」

本物の、本当に良いものをお出ししたい。

お客様へのひたむきな姿勢が友英さんの言葉からうかがえます。

 

 

 

 

 

 

f8鰹節産業の危機

日本の出汁文化を代表する鰹節ですが、その鰹節に危機が迫っていると友英さんは言います。

「本枯本節は、枯らすことにより鰹節の水分量が減り、鰹節自体が軽くなるため、歩留まりが非常に悪い商品です。

しかも削る最中に、製品にできない粉になったり、空中に飛散してしまうため、歩留まりはさらに悪くなります。

大手をはじめ、大半の鰹節問屋さんが、量販店さん向けに歩留まりを100%にすることに注力するあまり、カビを付けない荒節や、枯れが進む前に削る鰹節が、今や日本の鰹節の90%以上を占めています。

そのため、先代が危惧していた「鰹節=味気ないもの」というイメージが出来上がってしまいました。

 

 

f9また、昔は「鰹節=高価なもの」であったため、ギフトの一角を担っていました。

しかし今では鰹節は、スーパーや100均ショップでも買えるような安価なものになってしまったため、ここ数年で百貨店のギフトからなくなってしまいました。

利益を出さないと企業は生き残れないので、気持ちは分かるのですが、結果として鰹節離れが生じているのは憂うべきことだと思います。」

「より安く」を求める事で失われるもの。

それは今気づかないと取り返しのつかない結果を生み出しかねません。

高い物にも、安い物にも理由があることを考えなければなりません。

 

 

 

 


f010海外発 鰹節文化の再生

「世界文化遺産に和食が登録されたことで、海外の和食に対する関心がより深まっています。

日本はグルタミン酸ソーダの開発が進みすぎて、現代の若者に味覚障害が増えてきています。

一方、ヨーロッパ・イスラム・アフリカの人たちは、自然の食品を食べてきているため、昔の日本人に近い味覚があります。

海外の方たちが和食を食べ続けていることによって、「微妙な味の違い=旨味」を感じとれるようになってきている気がします。

これから鰹節を、海外の方がどのようにして使ってもらえるのかと思うと楽しみです。

そのときは、荒節のような鰹節ではなく、ちゃんとした本枯本節、天然昆布を使って、自分で調理していただいて、違いが分かってもらえると本当に嬉しいなと思います。

今年(2015年)ミラノ博という食品展示会があり、その中で和食を取り上げる機会があるとの事ですが、その際に使われる鰹節は是非本物の本枯本節を使ってもらいたいと思っています。」

海外で盛りあがる和食ブーム。

 

いま日本人が失いつつある本当の鰹節文化を継承するのは、もしかしたら外国人かもしれません。

 

f011終わりに

友英さんは、社長業の傍ら、日本の鰹節文化を継承していくため、様々な取り組みをおこなっています。

幼稚園や学校などで、出汁の食育活動をボランティアでおこない、鰹節体験や出汁の飲みくらべの中で、本当の出汁の美味しさを知ってもらうこと。

京都の塩昆布屋さんとコラボレーションして新商品の開発をおこない、鰹節や昆布のうまみを知ってもらうこと。

そして、香川県:観音寺市に讃岐うどん屋を出店し、出汁を飲める場所、話ができる場所をつくりだしています。

「1300年もの間、受け継がれてきた鰹節文化が存続の危機を迎えています。
本当においしい鰹節をつくりだすこと、そして本当においしい鰹節を知ってもらうこと。
本物の鰹節の美味しさを知っていただくことが、日本の鰹節文化の継承につながっていくと信じています。」

マルサヤの本枯本節が作り出す、一点の雑味もない旨み。

それは友英さんの「常に本物を追求する心」のあらわれかもしれません。

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