持っていかれます!【銚子市編】
今回の味の旅は関東へ。訪れたのは千葉県・銚子市。

利根川の河口に位置し、黒潮と親潮がぶつかる銚子沖は、日本でも有数の好漁場として知られています。
年間を通して多種多様な魚が水揚げされるこの町は、全国屈指の水揚げ量を誇る港町。中でも、ひときわ存在感を放つのが「金目鯛」。「千葉ブランド水産物」にも認定され、料理人からも高く評価されています。

今回はその銚子の金目鯛の中でも、「つりきんめ」と呼ばれる一本釣りの金目鯛を使った煮付けを手掛ける現場を訪れました。
昼過ぎに港に着くと、漁協の稲葉さんが出迎えてくれ、ちょうど朝の漁を終え、港に戻ってきた船の漁師さんとお話をさせてもらうことに。
「銚子の金目鯛は一年中、安定して脂が乗っているのが特徴です。
沖合50kmの水深200~300mほどの深海に生息していて、それを『立縄釣り』という、一本釣りに近い漁法で釣り上げています。
一本ずつ釣り上げることで、魚が傷つかず、弱らないため、鮮度の高い状態で水揚げができます。これが一番違うところですね。」
実際に釣り上げた金目鯛を見せてもらうと、目は澄み、身には張りがあり、赤い鱗が鮮やかに輝き、今にも動き出さんほどの魚体の美しさです。
漁港を後にし、煮付けの加工場へ移動すると、出迎えてくれたのは、ずらりと並ぶ大ぶりの金目鯛。

「釣りきんめの規格は500g以上ですが、うちは脂の乗ってくる600g以上のものを選んで使ってます。身の厚みもありサイズも丁度良く、煮付けにした時に全然仕上がりが変わるんですよ。」
そう答えてくれたのは、銚子漁協女性部の鞍橋さん。
「女性部は、魚食文化を広めるために、銚子の魚のおいしさをより多くの人に知ってもらって、食べてもらいたいと思って、魚のさばき方教室や料理教室なんかの活動をやってます。
令和5年の【きんめだいまつり】に出店したときは、金目鯛の煮付けを販売したんだけど、お客さんからとても評判がよくて、『この煮汁うめぇなぁ!煮汁だけでも売ってくんねぇか』なんて声をたくさんもらったんです。来てくれたお客さんへの提供が間に合わないくらい、忙しかったですね。
そんな盛況もあって、銚子の釣りきんめを広めるために、漁協から『金目鯛の煮付けの味付けをお願いしたい』って依頼を受けました。
銚子の煮魚は味が濃いのが特徴だから、それをしっかり再現するために何回も試作を重ねてきました。
そうやって、ようやく完成した商品だったもんで、漁協の方も気持ちを汲んでくれて、『銚子つりきんめ 浜のおかあちゃん仕立て』って名前をつけてくれたんです。味付けはね、昔からあんまり変わってないんですよ。」
そう言って笑いながら鍋をのぞく姿は、どこか家庭の台所のよう。
使うのは、銚子の老舗醤油醸造元「ヒゲタ醤油」の醤油、砂糖、酒、生姜のみ。
いわゆる「漁師飯」の味付けです。
「余計なことはせんほうが、魚はうまいですから。」とおっしゃりながら、鞍橋さんがちょうど出来上がった煮付けを持ってきてくれました。
箸を入れると、ほろりとほどける身。口に運ぶと、脂の甘みがふわっと広がります。
「どうです?脂、しつこくないでしょう。」
確かに、しっかり脂はあるのに、驚くほど軽やか。そして煮汁には、その旨みがすべて溶け込んでいます。
思わずお酒が…いや!ご飯が欲しくなる味。

そんなあじたびスタッフの心を読んだのか、鞍橋さんが日本酒ではなく白飯を持ってきてくれました。
「そこにご飯入れて食べるのが一番うまいんですよ。」
煮汁をたっぷり絡めた金目の煮付けをごはんにダイブさせて掻き込めば...
はい!間違いないお味です。
「銚子の金目鯛が美味しい理由は『海』にあります。黒潮と親潮、そして利根川から流れ込む栄養。この環境が、魚の脂の質を変えるんです。ただ脂があるだけじゃダメなんです。甘くならんと。」
そうおっしゃった漁師さんの言葉通り、銚子の金目鯛は脂も身も甘さが際立っていました。
茶碗飯を2杯もお代わりして大満足のあじたびスタッフに、鞍橋さんが一言。
「金目はね、煮て完成する魚なんですよ。」
刺身ももちろん美味しいですが、この土地では煮付けこそが郷土の味。
豊かな海と温かい人々の暮らしが、そのまま料理になったかのような味わいに、舌も心もほっこり気分になったあじたびスタッフでした。

追記:
せっかく銚子まで来たので、少し足を伸ばして「犬吠埼」へ。
関東最東端に位置するこの場所は、日本で一番早く初日の出が見られる場所としても有名です。
断崖に打ち付ける波を眺めながら、改めてこの海の力強さを実感。
ちなみに犬吠埼の沖にある岩は、東映映画のオープニング映像「荒磯に波」の撮影地なのだそう。荒波のイメージから日本海だと思っていたのですが、太平洋だったのですね。
勢いよく吹きつける海風に耐えながら写真を撮っていると…
突風で帽子が吹き飛ばされ海へ。
-----------見事に回収不能となりました(爆)
きんめの味に心奪われて、海に帽子を奪われて。。。
気がつけば、銚子にすっかり持っていかれていました。
















