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梨王国【白井市】

今回あじたびスタッフが訪ねたのは、千葉県の北西部に位置する白井市。

千葉県といえば、梨の生産量全国一を誇る「梨の王国」。
その中でも白井市は、県内でもトップクラスの生産量を誇る一大産地として知られています。


市内を車を走っていると、あちらこちらに梨畑が広がり、道路沿いには「梨直売」の看板が次々と目に入ります。

まさに「梨の街」といった風景です。

白井で梨栽培が始まったのは明治38年(1905年)。鎌ケ谷から移住してきた浅海久太郎氏が、白井木戸に梨の木20本余りを植えたことが、その始まりとされています。

以来100年以上にわたり梨づくりが受け継がれ、現在では「幸水」「豊水」「あきづき」など、さまざまな品種が栽培され、夏から秋にかけて全国へ出荷されています。


「白井の梨がおいしい理由は、何と言ってもこの環境です。」

そう教えてくださったのが、今回お話を伺った白井中央梨選果場組合の内藤組合長。

 

水はけが良く、梨の栽培に適した関東ローム層と呼ばれる火山灰土壌と、三方を海に囲まれた温暖な気候。さらに長年培われてきた栽培技術が重なることで「しろいの梨」ならではの味わいが生み出されています。

「でも、土が良いだけでは、おいしい梨にはなりません。梨に限らず、美味しい果実を育てるためには、収穫期以外の手入れが非常に大切です。
収穫を終えた秋には土づくりが始まり、冬には剪定。春になれば受粉、摘蕾、摘果と作業が続き、その後も除草や防除など、収穫まで一年を通して手をかけていきます。おいしい梨を作るためには、梨の木が元気に育つ環境を作ってあげることが大事なんです。」

梨の実だけを見るのではなく、木そのものを育てる。
その積み重ねが、毎年安定している「しろいの梨」の品質につながっているのです。

白井の梨が美味しい理由を伺ったところで、内藤さんに案内していただき、選果場内へ。

 

白井市内の梨農家からもぎたての梨が次々と選果場に運び込まれてきます。
それらを生産者が一つひとつ状態を確認し、傷や痛み、形などを厳しくチェック。基準をクリアした梨だけが選果の工程へと進みます。

選果工程ではベルトコンベヤーの上を次々と梨が流れ、重量ごとに自動的に振り分けられた梨を大きさや品質ごとに選別し、箱詰めされて全国へ出荷されます。

選果場には一日に1,000ケース、多い日には2,000ケースもの梨が運び込まれることもあるそうです。

「梨のシーズンは、朝は収穫、日が落ちるまでは選果場で選果、帰ってから梨の状態を確認する日々が続きます。夏場は休日もお盆もないですね。」

笑いながらお話しされる内藤さんでしたが、夏場の酷暑の中、朝から晩まで屋外で活動される体力と気力に脱帽です。

梨を育てる人だけでなく、選果場で選び、詰め、送り出す人。

たくさんの人の手を経て、ようやく一箱の梨が完成するのだと実感しました。

「白井の梨は、農家さん同士の交流も結構盛んです。実際にこの選果場では50軒以上の生産者が共同で選果を行なっていますし、若手の生産者も多く、栽培技術の講習会を開いたり、新しい技術を試したり、情報交換をしたりしています。」

世代間を超えた交流があり、それぞれが自分の畑でこだわりを持ちながらも、地域全体で「しろいの梨」の品質を高めていこうという空気があるのだそうです。

選果された梨を試食用にひと玉剥いていただきました。

 

包丁を入れた瞬間から、切り口から果汁がじわっとあふれます。
早速一切れいただくと、シャクッと小気味よい歯ざわりと、こぼれんばかりの豊かな果汁。そのみずみずしさを感じたあとに、爽やかな甘みがゆっくりと残ります。

かみしめるごとにあふれ出す果汁はまるで、梨ジュースを飲んでいるかのようです!

「白井の梨はシャリッとした食感、たっぷりの果汁、そして甘みが三拍子揃っているのが特徴で、そこをぜひ味わっていただきたいです。」

白井の梨づくりが100年以上続いてきた理由が、少し分かったような気がしました。
「白井市では現在『100年後もしろいの梨を』という取り組みが進められており、産地の未来を守る動きも始まっています。100年以上続く梨づくり。その歴史を受け継ぎながら、さらに次の100年へつないでいきたいと思います。」

そうおっしゃる内藤組合長の言葉に、しろいの梨の100年の伝統と生産者のプライドを垣間見ました。

 

追記:
白井を訪れた際、ちょっと気になった場所がありました。

その名も「白井そろばん博物館」。

「……そろばんの博物館?」
梨の産地を訪ねて、まさかそろばんを見ることになるとは思っていませんでしたが、せっかくなので立ち寄ってみることに。

館内に入ると、昔ながらの日本のそろばんはもちろん、世界各地で使われてきたさまざまなそろばんがずらり。
なんと約2,800点ものそろばんや関連資料が収蔵・展示されています。

普段は「計算する道具」としか思っていなかったそろばんですが、国や地域によって形や大きさ、使われ方まで違うそうで、見比べてみるとなかなか面白い。

館内には展示だけでなく、そろばん作りを体験できる工房や、昔ながらの「寺子屋」を思わせるスペースも。


さらに、ここは単なる博物館ではなく、地域の交流や文化発信の拠点としての役割も担っているのだとか。

「梨の街・白井」で、まさかそろばんに出会うとは。
でも、こうしたちょっと意外な場所に立ち寄ってみると、特産品だけでは分からない、その土地の文化や人の営みが見えてくるもの。

梨を訪ねて白井まで来たつもりが、最後はそろばんを眺めながら「白井って、なかなか奥深い街だな」と、すっかり感心してしまいました。