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より美味しい松阪牛を目指し、さらなる高みを求めていく【瀬古守伸】

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日本一の肉牛:松阪牛

「日本一の肉牛といえば、松阪牛」この言葉に異論を唱える人は少ないでしょう。

脂の旨味、メス牛のきめの細かいサシ(霜降り)が代名詞とされる松阪牛は、「肉の芸術品」として、全国、世界から賞賛されています。

松阪牛の故郷:三重県松阪市で、55年にわたり松阪牛に携わり、松阪牛の生産及び松阪牛年間出荷頭数、そして一店舗松阪牛販売量トップクラスを誇る「瀬古食品」の製造~販売を担っているのが、瀬古守伸さんです。

 

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a_seko300良いお肉ほどたくさん食べられる

「みなさん松阪牛はおいしい肉で、たくさんサシが入っているから少しで良いとおっしゃいますが、僕らは、毎日でも、いくらでも食べられるのが、本当においしい松阪牛という考えを持って牛を育てています。

以前、松阪牛をうちに買いにいらっしゃったお客様が、『松阪牛ならいつもだと一人150g計算で足りるから購入したけど、あんたんとこのお肉だと全然足らん』とおっしゃって、また追加で買いに来たこともあります。

うちの肉だと女性で200g、男性で300gでちょうど良いくらいの量です。

みなさんこの量を聞くと『えっ!?』って驚かれるんですけど、本当においしい松阪牛はこの量でも食べられちゃうんですよね。」

松阪牛のようなサシのある牛肉で、そんなに食べられるとは驚きです。

そのあたりの秘密をお伺いしました。

 

a_seko301短期肥育で「旬」の松阪牛を出荷

「やはりうち独自の肥育方法にあるのだと思います。

松阪牛に限らず、ブランド牛はよく長期肥育が良いと言われていますが、僕たちは必ずしもそれが理に適っているとは考えていません。

自分で育てて、自分で精肉にして、自分で食べることで行きついた肥育方法が『短期肥育』です。

瀬古食品は平成18年から牧場を始めたのですが、多分牧場を経営していなかったら、この短期肥育の良さが分からなかったと思います。

松阪牛に限らず生命体である以上、年齢が進めば進むほど老化も進みます。

そのため、うちでは松阪牛の生命活動が最も活発な27~28ヶ月で出荷しています。
やはりピチピチしていた牛を食べた方がおいしいと考えていますし、実際においしいとおっしゃるお客様が多いので。

 

a_seko302ただ、短期で仕上げるからコストが安く上がるかというとそんなことはなく、長期肥育でも短期肥育でも牛が食べる餌の量は変わりません。

うちでは長期肥育で食べる分の餌の量を短期肥育の間に腹いっぱい食べさせます。

ちょうど食べ盛り、育ちざかりの高校生に腹いっぱいご飯を食べさすようなイメージです。成長期にお腹いっぱいに食べるから、良い状態で肉を仕上げることができるのだと思います。

それに、若い松阪牛を食肉にするから肉も脂もフレッシュな状態です。だから脂やサシが入っていても食べやすいのが特徴です。」

成長期にたくさん食べて、うまさのギュッと詰まった、若くて元気で健康な状態の松阪牛を出荷する。

「旬」の状態で松阪牛を出荷するという瀬古さんの考え方は実に理に適っています。

 

a_seko304なんか分からんけどうまい松阪牛

「うちが松阪牛の牧場を始めたのが平成18年です。それから7-8年で1500頭の松阪牛の肥育をできるようになりました。

年間850頭の松阪牛を出荷していますが、そのほとんどがこの自社店舗一店での販売です。

こんな場所にあるお店ですから、県外のお客さんは普段買いにはいらっしゃいません。ということは、場所柄、松阪牛を食べる機会の多い地元のお客さんが、それだけの量を買っていただいていることになります。

手前味噌になりますが、それはうちのお肉をそれだけ地元の方に支持いただいているからだと思っています。もしおいしくなかったらここまで肥育頭数は増えていないと思いますので。地元のお客様に支持いただいているからこそ、肥育頭数も増えていると思っています。

お客様も『あんたんとこのお肉はなんか分からんけどおいしいな。』と良く言われ
ますが、そんなでいいと思っています。」

食べたら分かる。

瀬古さんの松阪牛のおいしさに理屈は要りません。

 

a_seko303今どきの松阪牛

ところで松阪でなぜ但馬牛が使われるようになったかをお伺いしました。

「昔は農耕というと、現在のようにトラクターではなく、牛や馬がその役割を果たしていました。そんな中で、但馬牛の雌牛が牛の中でも賢く、身体も小さくおとなしいため、農耕の際に扱いがしやすかったという点にあるんです。

実際に但馬の牛は大きくならないので餌をあまり食べません。うちが肥育している松阪牛は宮崎の子牛なのですが、ガンガン餌を食べるので生後27~28か月で出荷しています。でも但馬牛だと34~35ヶ月かかるんです。同じように餌を食べさせようと思っても食べないんですよ。

牛にも個体差があって、個体の能力に合った肥育方法をしていかないといけないと思っています。昔と食べる物も変わり、DNAも変わった現在に合った形で対応していかないと。

簡単に言えば、うちの松阪牛は今どきの松阪牛なのです。」

 

a_seko307みんながエースで4

松阪牛が日本一の肉牛と言われる所以も伺いました。

「松阪牛が他産地の牛より美味しいのは素牛が違うからでしょう。いうなればみんなエースで4番バッターみたいなもんですから(笑)

他産地ではなかなかそういう素牛を仕入れることが難しいです。もし仮に松阪牛に比肩するような肉質の牛を育てたとしても、松阪牛と同値で買ってもらえるかというと、それは難しいですから。

でも松阪牛なら、いくら質の良い素牛を買ってきても高値で取引されるから、これはもういい牛が出来て当たり前ですし、うまくて当たり前なんです。

素牛が良いので、365日間しっかり世話をして、愛情をかけられれば、美味しい肉が出来上がる素地があるので、松阪牛はおいしいんです。」

 

 


a_seko306時代に合わせた柔軟な発想

瀬古さんが店舗を切り盛りされる際にいつでも考えているのが柔軟な発想だそうです。
「『昔からこれやから』と決めつけるのではなく、自分で試して納得いくように、色々やっていくべきだと考えています。
たとえば焼肉用の肉の切り方一つにしても、昔は厚切りが好まれましたが、今のお客様には「硬い」食感に感じてしまいます。だから、うちでは焼肉用も薄めに切っています。

うちの焼肉用の肉を『こんなんすき焼きか、しゃぶしゃぶ肉や』と思われる方もいるかもしれませんが、今のお客様が美味しいと思ってもらうことが一番だと思っています。
ただ、チャレンジしていくというのもなかなか大変です。
だから失敗も多いですよ。新メニューを考えて、店に出すのですが、3日出してダメなメニューはすぐ下げます。お客様の反応を見れば、ダメかどうかの判断はすぐつくので。お客様の反応が悪い商品はすぐやめます。」

時代に合わせた柔軟な発想。そしてそこから生まれる試行錯誤。
Try & Errorの繰り返しが、より良い商品やサービスを作りあげていきます。

 

終わりに

a_seko305これだけ多くの地元のお客様に支持されているのであれば、多店舗展開も考えられると思いますが、瀬古さんは多店舗展開に対して異を唱えます。

「多店舗展開はまったく考えていません。僕は何店舗も見られないし、人が替わったら味も変わります。だから支店は作るつもりはありません。うちの松阪牛に魅力があれば、多店舗展開をしなくても、お客様が足を運んで買いに来てくれますから。うちの肉だけをわざわざ買いに来てくれるお客様がいらっしゃることはありがたい限りです。

うちの牧場は、将来的には2000頭くらいの肥育頭数を目指していますが、年間出荷できる頭数は決まっているので、あとはいかにクオリティをあげて、ブランド力を図っていけるかだと思っています。値段ではなくて『瀬古の松阪牛だから買いたい。』そう思ってもらえるように日々が改善です。」

量ではなく、質(ブランド)を高めていく。

松阪牛というブランドにあぐらをかかず、よりおいしい松阪牛を目指し、さらなる高みを求めていく姿勢が、瀬古さんの言葉に表れています。

 

 

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