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欧米先進国では他の食材の女房役【長澤光芳】

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舟形の熱きマッシュルーム魂

mushroom303山形県最上郡舟形町。遙か遠くに残雪美しい月山を望み、歴史を物語るように激しく蛇行する最上川が印象的な山間地。

地形はなだらかで、時折おだやかな風が吹く恵まれた環境に舟形マッシュル―ムの栽培場はあります。

「欧米先進国では他の食材の女房役として欠かせないのに、日本では付け合わせ程度にしか認知されないマッシュルームを料理の主役に。」

そんな熱い思いと、安全・安心な独自の生産技術で、マッシュルームを料理の主役にまでのし上げたのが、食品業界から数年前にこのマッシュルーム生産に乗り出した社長の長澤光芳さんです。

キノコといえばマッシュルーム

生で食べられる唯一のキノコ、マッシュルーム。

日本では料理の脇役ですが、「シャンピニオン」と呼ばれ、欧米では「キノコといえばマッシュルーム」というほどポピュラーな存在です。

 

 

mushroom300マッシュルームの旨み成分はアミノ酸とグアニル酸。アミノ酸の含有量はシイタケと同程度ですが、グアニル酸はシイタケの2.5倍も含まれています。

グアニル酸の特長は、うまみ成分のイノシン酸と合体すると、うまみが掛け算になること。食材の持ち味を引き出し、クセやえぐみを消す調味料の役割を果たします。

強烈な個性や香りがないので相手の食材を殺さず引き立て、毎日食べても飽きない。

「欧米では脇役どころか、『和食の出汁に相当する』料理には欠かせない存在なのです。」と語る長澤さん。

このマッシュルームを、日本でも何とか広めたいと、長澤さんは日々頭を悩ませ、ある結論に達します。

 

 

 

mushroom302スーパージャンボマッシュルーム

「欧米ではポルタベラといって、皿のように傘が開いた大ぶりのマッシュルームはよく食べられています。ピザ生地のようにいろんな食材を載せオーブンで焼いて。

ところが、裏の黒いヒダが丸見えで、目でも料理を楽しむ日本人には合わない。

ならば、レギュラーマッシュルームをそのまま大きくしたら肉厚できれいだし、受け容れられるのでは、と考えました。」

そこで出来たのが、今や舟形マッシュルームの代名詞とも言える「スーパージャンボマッシュルーム」

元々はフォーシーズンズホテル椿山荘のイタリアンレストランのシェフが、「顔の大きさくらいあるマッシュルームを」と注文したのがきっかけで、それに応えて栽培したのが始まりです。

スーパージャンボマッシュルームは、特大で直径13~15センチと、通常のものの約10倍。

「身が締まっているから食感がしっかりしています。エリンギほど堅くなく、ほどよい歯ごたえ。
アワビと一緒に煮込むと、どちらか区別がつきませんよ。」と長澤さんは言います。

このジャンボマッシュルームの登場により、一流シェフや料理長からの引き合いが殺到。

ついには2006年、テレビ番組「新どっちの料理ショー」で紹介され、人気に火がつきました。

 

mushroom301スーパージャンボマッシュルーム誕生の貢献者

「味がなくてゴムみたい、ちょっとしたトッピング。 そんなマッシュルームのイメージを変えるには大きくして、メインの食材として使われることだと考えました。」

そんなところに舞い込んだのが、前述のイタリアンシェフの注文でしたが、スーパージャンボマッシュルームの誕生にはもう一人、小さな貢献者がいます。当時、小学校5年生だった長澤さんの次男です。

「夏休みを1週間残して、自由研究の課題が手付かずだったので、1日2回、マッシュルームの生長記録を取ることにしたんです。

生長する早さやどこまで大きくなるか。次男の生長記録が、9月末にシェフから注文が来た際に役に立ちました。

たまたまデータを取った後で要望があったので、次男の自由研究の賜物ですね。」

 

 


 ジャンボマッシュルームは特別の品種ではなく、レギュラーマッシュルームで大きくなりそうなものに目印をつけて育てています。

 「もともとマッシュルームが育て方によって大きくなるのは海外の情報でわかっていましたからね。直径何センチのものが欲しい、という『オーダーメイド』で納品しながら技術を磨いていきました。」

影の努力

ただ、このスーパーマッシュルームは、製品になるまでにひと手間もふた手間もかかる代物。

「マッシュルーム自体は放っておいても大きくなるんですけども、密集してぶつかると胞子が出て酸化してしまうので、間引きをしてあげないといけないんです。

さらに、間引きで残ったマッシュルームにカップをかけてやらないと綺麗な丸にならないんです。

毎日農場を回って、地道にサイズを計ってですね。ようやく出てくるというのがジャンボマッシュルームなんです。

 

 しかも、きのこに本気出してもらうと、三日くらいでスーパージャンボの大きさになってしまいますんで油断はできません。

収穫も生鮮食品ですので、コントロールしてても何棟か一気にできてしまう時がある。次の日の朝になると大きすぎて傘が開いて商品にならないということもありますので、何時までかかっても取らなきゃいけないということもありますので。

スーパージャンボマッシュルームが出来上がるにはそれこそ影の努力があります。」

幻想的な風景

それにしても栽培場のマッシュルームの美しいこと。

今回初めてマッシュルームの圃場にお邪魔しましたが、もともとかわいらしいマッシュルームが、菌床一面に発生している様は幻想的で、思わず見とれてしまいます。

 

 

「フラッシュという、マッシュルームが一斉に発生するタイミングがあるんですが、夜静かになってから、たまに一人で入ってきたときに、ちょうどフラッシュに出くわすと、なんだか別の世界に来た気がしてしまいます。」

夜の物静かな時に菌床一面に発生するマッシュルームたち。想像しただけでも幻想的な光景が目に浮かびます。

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mushroom304安全・安心のマッシュルームブランドの確立へ

舟形マッシュルームは、栽培面積42坪のハウスが24棟。年間生産量は約370トン。全国シェア約8%で第3位、東北では最大のマッシュルームファームです。

 

高評価の根底には、安全・安心な栽培技術の確立があります。

馬厩肥(厩舎から出る肥料)、稲藁、コーヒーと大豆の絞り粕、石膏。これら未利用資源が、菌を培養する培地に使われる資材ですが、混ぜ合わせ発酵させる過程で、ほとんど臭いが出ません。

「マッシュルームはね、実に色んな意味でクリーンに生産できるものなんですよ。

うちは農薬のたぐいも、化学肥料のたぐいも使わない。病害が一切発生しないという前提で栽培しています。

そのために徹底的な洗浄をするけど、それも変な殺菌剤は使わないで、蒸気で殺菌しています。

それと、うちはマッシュルーム栽培で一般的な鶏糞粉は使いません。マッシュルームの発生はいいけど臭うし、当然キノコバエ等の害虫も来る。

それに味があんまりよくない。なんだかぼやっとしたマッシュルームになってしまう。

やはりきちんとしまって、味の濃いもの、生で食べてもおいしいものをつくりたい。

だから、宮城県南部にあるサラブレッド生産牧場の施設から仕入れる馬厩肥を使っています。

安全であることも大切ですしね。」と長澤さん。

そんな努力が認められ、農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の一つJGAP認証のほか、日本農林規格(JAS)認証を取得しています。

 

 

終わりに

「マッシュルームの本当の美味しさを伝えたい。そのためには、いかに美味しいマッシュルームを作るか。それだけを考えてきました。

マッシュルームそのものの品質はもちろん、それを育む環境や様々な思い・こだわりなど全てに自信を持っています。

一人でも多くの人にマッシュルームの美味しさを伝え、家族みんなで味わってほしいという願いをこめて、ここ舟形の土地から皆様のご家庭へマッシュルームをお届けする。

それが私の使命だと思っています。」

地域と自然との共生を果たし、人、水、気候、風土が重なり良質なマッシュルームが生まれる。マッシュルームを日本中の食卓に届けるのが長澤さんの大きな願いです。

 

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