道は狭いが景色は広い。食べた魚は全て旨い。【三重志摩編】
愛知~三重のあじたびも最終日。
旅の最後の目的地は志摩半島の東端「安乗岬(あのりみさき)」にある「丸勢水産」さん。
志摩を出発し、スペイン村から車を走らせること20分。
幹線から枝道に入り込んでゆくと、どんどん道が狭くなっていきます。
軒を連ねる家並みを縫うように路地が張りめぐらされていて、ついにコンパクトカーでも通り抜けることが難しいほどの道幅に。
「おいおい、このまま行って大丈夫なのか!?」
不安な心持ちになりながら車を運転していると、ナビが目的地である丸勢水産さんをロスト…
もはやUターンも切り返しも出来ない道幅のため、引き返すこともできません!
バックで戻るなど、たとえ自動車学校の教官でも難儀なはず。
仕方なく、トロトロとさらに車を進めると、道がのぼり坂になり、上へ上へと向かっていきます。しかし狭い。
底知れぬ不安と葛藤しながら坂道を上っていくと、やっと飲食店や民宿があり、そろそろ着くのかな?
しかしそこだけ道幅が広く、また狭い…
そこから数分、ようやく灯台のある高台の公園に辿り着きました。
今までの狭い道のりからは想像もつかない広い駐車場が完備され、灯台のある突端までは平坦で緑の絨毯。
眺望も良く、最高の景観を前にコーヒーでも飲もうと思ったのですが、売店すらありません。どうやらこの景観を維持するため、すべての施設を省いたようです…
幸いアポイントまで時間があったことから、岬の先端にある灯台を、入場料100円を払って見学することにしました。
こちらの灯台は「安乗灯台」。
延宝9年(1681年)に、徳川幕府が船の道しるべとして、燈明台を立てたのが始まりだそうです。
以来330年の間、行き交う船を見守り続けてきた安乗灯台。現在は、昭和23年に建替えられた四角形鉄筋コンクリート造りのものです。四角形の灯台はかなり珍しいらしいです。
眺めは太平洋を一望する圧巻のパノラマ!
しかしながら、岬の突端だけあって、またその日は目を開けるのも大変なくらいの強い風が吹き、5分も立っていられず、早々に退散…
短い間でしたが、大自然のエネルギーを一身に浴びてきました。
安乗灯台をあとにして、ナビを再セットし、あのりふぐの生産者「丸勢水産」さんへ。
今度はナビも迷わずに、無事丸勢水産さんに到着。
丸勢水産さんでは、会社の隣に直営店も経営されていて、お昼をいただきながら大山部長からお話をうかがいました。
大山部長に、途中で迷路のような道に迷い込み、灯台まで行ったことをお話しすると、
「安乗の道が狭いのは、台風や大風で家が飛ばされないよう、集落が密集して作られているからなんです。漁師町には結構多い作りなんですよ。」
と教えていただきました。
三重県安乗漁港界隈で獲れる天然とらふぐは「あのりふぐ」と呼ばれ、知る人ぞ知るブランドふぐ。築地でも常に高値で取引され、下関をはじめ、全国各地に出荷されています。
あのりブランドはフグにとどまらず、あのりさば、あのりあじ、宝彩エビと多岐にわたり、いずれも鮮度抜群の天然物で高い評価を得ています。
訪問日には、あのりさばの水揚げが無かったため、あのりふぐ、あのりあじ、宝彩エビをいただきました。
宝彩エビは特大の天然車海老で、歯を押し返すようなプリッとした食感と、繊細な甘味と旨みが口の中に広がります。
あのりふぐは薄造り。しかし、実際は厚造り!?噛みしめるごとに身から旨みが染み出てきてきます。
ふぐというと淡泊で繊細な味わいですが、あのりふぐはしっかりと熟成させた旨みがありながらも、身が引き締まりコリコリとした食感が印象的でした。
そして一番驚いたのが、あのりあじ!
25cmはあろうかというビックサイズのアジが登場!これほど大きなアジにはなかなかお目にかかることができません。
醤油もはじく抜群の脂乗りに、しこしこの食感。関あじにも負けない味わいです。
安乗の自慢の海産物を堪能させていただきました。
食事を終え、お茶を飲んでいると町内放送が流れてきました。
「本日~、安乗漁港で~、ケンケンかつおが~、揚がりました~。ご希望の方は~、○○水産まで~、お越しください~。」
「ケンケンかつお」という言葉が耳馴れなかったため、大山部長に確認したところ、釣りたてをその場で〆たかつおと聞いて、※前日のモチかつおと同種のカツオということが分かりました。
お土産に持って帰りたかったのですが、まるまる1本買いということと、名古屋からは新幹線だったため、泣く泣く断念しました…
※あじたびスタイル:磯の香りと昭和の香り【三重伊勢鳥羽編】をご参照ください。
それにしても町内放送で放送されるとは。
漁師町ならではのサービスに感心しました。
追記:
丸勢水産さんでの打ち合わせを終え、車で安乗を出たのが16時前。
名古屋駅に到着すると、時刻はすでに19時前。
帰りの新幹線もまだあったため、夕食は近隣で名古屋メシを食べて帰ることにしました。
ひつまぶし、味噌煮込みうどんは定番なので、なかなかお目にかかることのないものをと思い、駅地下街のアパレル店の店員さんに尋ね、「あんかけスパ」を食べることにしました。そこで、店員さんに紹介していただいた「スパゲッティハウスチャオ」さんに向かいました。
名古屋駅からは5分ほど歩くため、地元の人以外はなかなか行く機会がないと思いますが、名古屋っ子なら知らない人はいないと言われるほどの超有名店らしいです。
具材はウインナー、タマネギ、ピーマン、ソーセージ、ベーコンなどが一般的で、
ソーセージ、ベーコン等の肉類の具材を使ったものが「ミラネーゼ」
野菜の具材を使ったものが「カントリー」
両方を使ったものを「ミラカン」と呼ぶ店が多いそうです。
この基本のあんかけスパに海老フライなどをトッピングできるようなのですが、今回はミラカンを注文。
柔らかめの極太スパゲッティーに、甘みと酸味のトマトベースあんかけがたっぷりと絡み、胡椒のスパイシーなピリ辛さがあとを追います。
天津丼の甘酸っぱいあんかけをスパゲッティーに回しかけたイメージですが、もう一口、もう一口と後引く美味しさでした。
異彩を放つ名古屋メシを、また一つ開拓できました。
ごちそうさまでした。