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試行錯誤を重ねることが進化【緒方廣秋】

宮崎県:宮崎市。沖縄県よりも日照時間の長い温暖な気候に恵まれた宮崎県では、パパイヤやライチ、柑橘など南国の果実栽培が盛んです。その代表果実であるマンゴーは、トロピカルな香りととろけるような舌触り、濃厚な甘みと酸味のバランスが取れた上品な味わいが特徴。東京の市場関係者からも「日本一美味しいマンゴー」と評されています。


そんな宮崎マンゴーの生産者の中で、毎年とびきり美味しいマンゴーを作る名人が緒方廣秋さんです。

 

六十三にして立つ

「私は元々建築関係で働いてまして、私が63になったときに会社を子供に継いだんです。ほいで『俺は子供の頃から百姓がしたかったんだよな。』って妻に話したら、『そしたら、お父さんマンゴー作ろうやー。マンゴー作れば、私はいくらでも食べられる。』って、妻がマンゴーが好きだったもんで。『ほいじゃあ、マンゴー作るか。』と言って始めたのが13年前。63歳の時になります。」

63歳にして新規事業を始められるバイタリティー。「六十の手習い」の言葉を地で行く緒方さんの情熱に驚きを隠せません。

十三年の名匠

建築関係からマンゴー農家への大転身。それから13年の月日を経て、今では名人と呼ばれるほどになった緒方さん。マンゴーを始められた頃は苦労も多かったと思うのですが?

 

「いきなりマンゴーやるって言っても、右も左も分からなかったもんで、まずは一番うまいマンゴーを作る人の所に弟子入りするのが早いと思って、お師匠さんの門を叩きました。

そのお師匠さんは農協の会員さんなんですけど、素人の私に自分の持っている技術や経験をすべて教えてくれました。

私が自分で畑を持った後も、お師匠さんが2週間に一遍必ず来ていただける。そいで畑を見て『温度を上げろ』とか色々指示していただいたおかげで今の私があります。

私は農協の組合員では無いですから、お師匠さんがあんまり私に熱心に指導されるのを見かねて、農協から『あの人(緒方さん)に指導するのは困る』とお叱りを受けたとか。しかし、お師匠さんもまた気骨がありまして、『お前たちも俺から教えてもらってるくせに、うるさいこと言うな。』と農協に逆に怒鳴り込んだそうです(笑)」

 

船頭多くして船山に上る

「当時は県がマンゴー栽培を奨励していたので、マンゴー栽培を始められる方が多かったんですけど、失敗される方はですね、大勢の意見を聞き入れるんですよ。私のところにも色々な人が来て、『あげんせんといかん』とか、『こげんせんといかん』と言うのですが、『ああそうですか』と聞くだけは聞きますが、私はお師匠さんの言われた通りのことしかやりませんでした。マンゴー栽培を始められて焦っている人は、みんなの意見を『そうか、そうかもしれない』と聞いて、ほとんど失敗されますね。」

緒方さんのそんな実直な姿が、師匠の方の心を動かし、陰に日向に緒方さんのマンゴー栽培を見守っているのではないでしょうか。

12000分の1

農園を見学させていただくと、ちょうどマンゴーの花が満開になっていました。

 

「花は一枝で12000輪くらい咲きます。このすべてがマンゴーの実になるのですが、ミツバチなどによって受粉したものでないと大きくなりません。ジェット噴射で、花びらや小さな実を飛ばした後に、残ったマンゴーの実の中で大きなものを5個くらい残して、あとは摘果します。ほいで、この一枝から大体葉っぱ50枚に対して1個だけ残してあとは落とします。なんぼこっちに良いのがなっても1個は落とします。」

ちょっともったいない気がしますが…と緒方さんに尋ねると、美味しいマンゴーを作るのには一にも二にも摘果が重要で、この1個の取捨で品質が大きく変わってくるのだそうです。

3万個にひとつひとつ

「マンゴーは剪定をしないと樹がどんどん伸びてしまいます。果実にまんべんなく日光が当たるようにしないと鮮紅色にならないので、剪定して腰から胸ぐらいの高さになるように低樹高に全体を揃えます。また、果実が紫色になった頃に一つ一つ糸で吊るしてネット袋をかけはじめますが、これは葉の影にならないようにするためと、樹上で完熟した果実が自然落果したものをキャッチするためです。

うちで栽培しているマンゴーは約400本あって、1本あたりに30~100個の実を付けるため、3万個ほどの果実にネット袋をかけます。」
3万個ですか!気の遠くなるような作業ですが『お客様の喜ぶ顔を想像すると苦にはなりません。』と緒方さんは笑顔でおっしゃいます。

 

至高の味わいキーツマンゴー

緒方さんの果樹園では、一般的なアップルマンゴーのほかに、キーツマンゴーという別品種のマンゴーも栽培しています。

「キーツは繊維が全くありません。トロッとしていてプリンみたいな食感で、しかもアップルマンゴーより糖度が高かです。1回食べたらまた食べたくなります。ただ、キーツは出来が不安定な上に栽培が難しかとですよ。キーツは宮崎のマンゴー農家はみんな持ってるんですけど、自分たちが食べる用に1本か2本くらいしか持っていません。だからなかなか出回らんとですよ。じゃけんどん、せっかくおいしいマンゴーなんだから、多くの人に食べてもらいたいと思って本格的に栽培を始めました。栽培当初は出来に自信がなかったものですから、リピーターのお客様60軒くらいに『良かったら食べてください』と言って全部無料でお送りしました。そしたらお客様からは『こんなに美味しいのにどうしてお金取らないの!?』って言われて、ようやく自信を持って販売に踏み切れるようになりました。」
「変なのを送って、うちの名前を汚す訳にはいかんとですよ。」と語る緒方さん。その言葉に「品質本位の緒方マンゴー」のプライドが顕れています。


終わりに
「私は48の時にサーフィンを始めまして、休日には波の良い海を求めて、それこそ日本全国を回りました。旅すがら現地で名産品を食べるのですが、山形のさくらんぼや新潟のお米、北海道の海産物など、やはりその地方ならではの名産品があり、名産品が育つ環境があることに気づきました。振り返って自分の故郷宮崎を見ると、温暖で日照時間の長い気候がマンゴー栽培に最適だということに改めて気づかされました。

幸いマンゴーは、宮崎県自体が宮崎県の気候に合うよう品種改良してくれるなど、県を挙げて栽培を推奨しています。私が宮崎に生まれたのも、先妻がマンゴー好きだったのも、神様が私にマンゴー栽培をするよう導いてくれたのかもしれません。私は76歳になりますが、マンゴー栽培はまだまだ道半ば。試行錯誤を繰り返し、もっとおいしいマンゴーを作って、もっと多くのお客様に喜んでいただきたいと思っています。」

神話のふるさとで生まれた日向隼人。おいしさへの追求を止めない緒方さんが作るマンゴーは、生命力にあふれ、樹上で艶やかな紅色に染まり、神々しい輝きを放っています。

 

緒方さんの商品