講師 西島豊造 氏

こだわり米専門店
「スズノブ」代表取締役

五ツ星お米マイスター
PROFILE
北里大学卒業後、財団法人北海道農業近代化コンサルタント(現:一般財団法人北海道農業近代化技術センター:農業土木コンサルタント)に勤務。

1988年9月に家業の米屋「株式会社鈴延商店」を継ぐ。
大学時代の「土」の知識、北海道で得た「農業土木」の知識、産地を回ることで得た知識、歴史から紐説いた知識など、膨大な米に関する知識を活かし、お米のソムリエ、お米博士として、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などに多数出演。調理師学校の日本料理科の講師もつとめている。




過去開催記事

「あじたびサロン」とは

楽しいシニアライフを考える上で食生活は欠かせません。
日々の食事が美味しくて、食事の時間が愉しい。これほど幸せで健康なことはありません。
『美味しいシニア向けメニューを考える』 これが「あじたびサロン」のテーマです。
元気なシニアの皆様に向けた、美味しく楽しく、ちょっと健康や身体のことも気遣って・・・そんなレシピを考えていきます。

現代社会において、冷凍食品やチルド食品は簡単で便利な食事として、日本の食卓に欠かせないものになっています。しかしそれに伴い、料理を作る機会が減りつつあります。

料理離れが進む今だからこそ、今一度、国産食材の良さ、旬や鮮度、食感を感じられる料理を作ってみませんか。
ご夫婦二人で作って美味しい、ご家族みんなで作って楽しい、手間のかからないレシピをご提案します。
またサロンの中で、生産者の方から産地の光景や食材のルーツ、苦労やこだわりなど、普段なかなか聞くことのできない秘話を伺ったり、ゲストを招いて、伝統的な食文化や食習慣について学び、「日本の食」の素晴らしさを再発見していきます。

私たちと一緒に、食べて、学んで、愉しむ「味な旅、味の旅」に出掛けましょう。


今回の食材と料理

講師 西島豊造 氏さんインタビュー

日本のお米文化についてどのようにお考えですか:

私たち日本人は古来よりお米を主食として食べてきました。日本人は長い間お米を主食としてきたため、穀物体系で腸が長くお米を最も消化吸収しやすく出来ています。そんなお米ですが、食の多様化により、現代の日本には様々な国の食文化が溢れ、また夫婦共働きの家庭が増えたことで、家族の食事を惣菜や外食で済ますようになり、一日三食の中でお米を一食も食べない日本人が増えてきています。
これは和食の根幹である米文化の危機です。ご家庭でお米を炊くことで、お米に合った食事に自然と回帰していきます。ご家庭でお米を炊く事イコールお米文化の継承といっても過言ではありません。

 

お米の選び方について教えてください:

今や日本全国で様々な品種のお米が生産されています。たくさんの品種があり、品種ごとの特徴も詳しく説明がされていますので、色々な産地や品種のお米を食べ比べて、粘りや甘み、香りなど自分にとって好みが合う産地を見つけるのが良いと思います。

一般的に「地産地消」と言われるように、地元の水や食べ物には地元のお米が良く合います。
今お住いの地域でお米が作られているのでしたら、地元のお米を買うのも良いと思います。

ちなみにスーパーで販売されているお米は産地で精米して、そこから流通を経て店頭に並ぶため、精米から1週間以上経っているものが多いです。

購入の際には精米日が新しい物を選びましょう。

 

 

お米の保管方法はどうしたら良いですか:

お米は現在生鮮食品として扱われています。1週間くらいでお米の鮮度は落ちてきますので、なるべく精米したてのものを短期間で食べきるのが理想です。多めに購入される場合は、小分けにして冷蔵庫の野菜室に保管することで、お米が冬眠しますので鮮度が約3倍長持ちします。常温保管はNGです。特に冬場は室内が乾燥するので、お米がひび割れを起こしやすくなります。お米がひび割れを起こすとお米を研ぐ時や炊く時に割れて、炊きムラや炊きあがりの食感が非常に悪くなるので、常温での保管はお勧めしません。

また炊きあがったごはんは炊飯器での保温はNGです。上手に炊きあがったお米は、そのまま冷まして食べた方が甘みが出て美味しいです。一日で食べきれない場合は、冷凍庫に入れて保管すると良いです。ご飯を冷凍する際のポイントはラップで包む際は詰め込まないこと。お米を詰め込むとせっかく美味しく炊いたご飯が潰れてしまい、食感が悪くなります。ですから中に空気を入れるようにふわっと入れてもらうのが大事です。またラップで包むタイミングですが、温かい内に包んでしまうと水蒸気がラップに付いて凍ってしまいます。凍った水蒸気は温める際にお米の表面に流れてしまい食感が悪くなるため、お米から湯気が立ちあがらなくなり、冷たくならないうちにラップで包むのが最適です。

 

玄米食は身体に良いと言われていますがどうお考えですか:

玄米食が身体に良いからといって、一年間ずっと玄米食というのは好ましくないです。玄米食は排出が強すぎるため貧血になりやすい。ですので体調が悪い時には玄米は避けた方が好ましいです。毎日三食玄米食ではなく、一週間の中に白米や麺類を取り入れることでお腹に適度な刺激を与えることで腸が活性化し、玄米が余分なものを排出してくれます。

シニアとごはん食のかかわり方について:

前述のように、親御さんがご飯を炊く機会が少なくなり、お米を美味しく炊けないご家庭が増えています。そのご飯を食べた子供たちがご飯が美味しくないとか、味がしないとか味覚に障害が生じています。ご飯は味覚形成の基本です。幼い頃から家の手伝いでお米を炊いてきたシニアの方たちが、是非美味しいお米の炊き方を、お子様やお孫さんに教えていただき、家族全員でご家庭の料理で食卓を囲んでいただければと思います。お米をご自宅で美味しく炊く事がお米文化の存続、さらに食育にもつながることになります。

 

西島社長直伝「おいしいお米の炊き方」:

さて、今回のあじたびサロンのテーマは「元気のもとはやっぱりごはん!プロに聞く、おいしいお米をより美味しくいただくために」ということで、日本一有名なお米屋さんスズノブの西島豊造社長に三種類の新米を使って、おいしいお米の炊き方を教わり、炊きあがったごはんの食べ比べをおこないました。

五ツ星お米マイスターの資格を持ち、全国のお米の産地を回られている西島社長。
早速おいしいお米の炊き方を指導していただくことに。

西島社長によると、同じお米でも研ぎ方とかき混ぜ方が違うだけで、出来上がりが格段に変わってくるとのこと。
そしてお米の計量はしっかりと。計量カップにお米を山盛りすくい、箸でカップの淵の端からなぞれば簡単です。

それではいよいよ美味しいお米の炊き方の1つ目のポイント「研ぎ方」へ。

 

 

お米の表面には糠(ヌカ)が詰まっていて、お米を研ぐことによってこの糠をはぎ取ります。糠が取れたところから水が入っていって、粘りと甘みが出てくるとのこと。最も吸水をする初回の水はミネラルウォーターか浄水が基本で、表面の糠の臭いをお米が吸ってしまうため、最初の水はすぐに捨てます。2回目からは水道水でも構わないそうで、軽くかき混ぜ汚れを浮かせて捨てるすすぎが2回。その後、ボールを持つ感じで指を広げた状態でお米に差し込んで20回ほど研ぐと、お米から糠が驚くほど出てきます。その後、再びすすぎを2回おこない、さらに10回研いでもう2回すすぎをおこなって研ぎは終了。

水はまだ濁っていますが、ここから先の濁り水は汚れではなく澱粉なので、これ以上やると旨みの元がどんどん抜けて行ってしまうとのことで、粘りだけが強くて味のないごはんになってしまうのだとか。

ちなみに、ざるを使って研ぐのはお米が割れる可能性が高いためNG。炊飯器の釜を使ってお米を研ぐ場合は必ず手で。泡だて器のような金属製のものを使用すると、釜にひびが入り、割れたり壊れたりするため避けるようにとのことでした。

 

研ぎ終えたお米を炊飯器に移して、水を目盛まで加える西島社長

「新米だから水は少なめで良いのでは?」とか「浸水時間はどれくらいですか?」との質問が出ましたが、西島社長曰く「最近の炊飯器は浸水~炊き上げ~蒸らしまですべてやってくれます。

お水加減も新米だから減らすのは間違いで、お水は目盛通り入れていただいて大丈夫です。

もし柔らかく炊けるようであれば水の量を目盛線の上下程度に調整するか炊飯器の炊き分けモードを使うと便利です」との回答に一同納得の様子でした。

1時間ほどでお米が炊き上がり、ジャーの蓋を開けると中からはピンと立ったピカピカの新米が!

 

 

 

 

「今の炊飯器は蒸らしまでしてからタイマーが鳴るので、蒸らしは必要ないですし、むしろ保温で置いておくと、味がどんどんなくなったり、ご飯が潰れてべとべとになってしまいます。ですからタイマーが鳴ったら、すぐに蓋を開けてお米とお米を切り離します。」

 

①炊きあがったごはんにシャモジをスッと差し込み②横にスライドさせて十文字に切っていきます。③切った四分割のご飯を四分の一ずつ底からすくって、ひっくり返します。④釜の底のお米は水分があり固まっているので、それをかき混ぜるのではなく、優しいタッチでほぐしていきます。これを4回繰り返して終了。

ほぐし終わったごはんをシャモジですくい上げると、お米がホロホロとほどけ、一粒一粒がしっかりとしています。これが理想の炊き方なのだそう。

炊きあがった三種のごはん。

千葉県産コシヒカリ、秋田県産あきたこまち、そして厳選米を各々器に盛り、付け合わせの野沢菜や佃煮と共に食べ比べをしました。

 

 

まずはごはんそのものの味を食べ比べることに。

一口ずつ食べて、一同からあまりの食味と食感の違いに「こんなに違うんだ!」「おいしい!」「お米がしっかりしてる!」との驚きの声が。

「これだけ粒がはっきりしているお米は、今まで皆さんが経験したことの無い食感だと思います。粒感がしっかりしていることで、はじめて品種の違いが分かるのです。」と西島社長。

確かに三種類を食べ比べてみると、千葉県産コシヒカリは独特の香りがあり、クセが無くあっさりした味わい。あきこまちは粒感がしっかりしていて粘りが少ない。そして参加者の方から最も好評だったのがやはり当店の極上魚沼産コシヒカリ厳選米。コシヒカリ特有の粘りがあり、しかも噛むほどに甘みが口の中に広がり、お米の力強さは一番でした。

西島社長も「シンプルにお米の味を楽しむならこのお米(厳選米)が一番。塩だけで十分美味しい。」とおっしゃっていました。

 

三種のご飯を食べ比べた後は、付け合わせをいただきながらごはんを食べ進めていると、おかわりをする方が続出。みなさんの豪快な食べっぷりに「美味しくご飯が炊けると、ご飯だけでも当たり前のようにおかわりできちゃうんですよね。」と、西島社長が笑いながらおっしゃっていました。

 

「お米(米飯)の良さについて」も考えてみました。

私たちが健康的な毎日を送るためには、活動のための十分なエネルギーが必要で、そのためには主食を中心としたバランスの良い食事を取ることが大切です。
私たち日本人は古来よりお米を主食として食べてきました。生きていくうえで必要なエネルギー源を主にお米からとってきたのです。

主食にごはんを選ぶとおかずが変わる
ごはんには焼き魚や納豆、味噌汁にお浸しや煮物、漬物などがよく合います。
一方、パンはハムエッグ、ベーコン、ソテーやサラダ、牛乳などがよくある献立です。
これを比べた時に、圧倒的にパンのおかずの方が脂質が多くなります。
そのため、ごはんを選ぶと、魚・大豆製品・発酵食品・海藻などの食品をとる機会が増え、現代人が摂りすぎている脂質を控えることができるのと同時に、不足しがちな栄養素を補うことにつながります。

ごはんは腹持ちが良い
ごはんは小麦などの粉からできているパンや麺類と違って粒のままで摂取するため、パンや麺類より食べごたえがあり満足感を得られ、体内でもゆっくりと消化・吸収されていきます。そのため腹持ちが良く間食が少なくなります。

ごはんは無添加食品
お米は加工品ではなく原料そのものです。また、炊飯する時も加えるのは水だけです。
一方、パンはマーガリンや砂糖、塩などが使われており、スーパーなどで販売されているパンは、イーストフード・乳化剤・酢酸Na・甘味料・香料などの添加物まで入っています。

日本人の消化器系統はごはん食に適している
日本人は長い間お米を主食としてきたため、その消化器系統はお米を最も消化吸収しやすく出来ています。「吸収しやすく」というのは「ふとる」と言う意味ではなく、「負担が少なく有効で健康的に」と言う意味です。満腹時でも、ごはんの場合は気持ち悪さが少ないのは、ごはんが日本人の身体に適しているからだと言えます。

米は保存がきき、調理するのが簡単でエネルギー源になる。主食としてたいへん理にかなったものなのです。

 


試食会参加者の声

鈴木正人様 お米の奥深さが分かり大変面白かったです。お米の炊き方は早速家で実践してみたいと思います。食べ比べについては、あきたこまちは多少甘みがあり、さっぱりしている感じ。魚沼産こしひかり厳選米は甘みが強く粘り気もあって豊かな味わいでした。あじたびサロンは大変面白い企画なので、また別の企画も参加してみたいです。

内村六実様 お米の食べくらべを体験したのは初めてだったので違いが分かり良い機会でした。あきたこまちはツヤツヤで、千葉県産のこしひかりと同じように味はサッパリしていて、どんなおかずにも合う感じがしました。魚沼産こしひかり厳選米は甘みがあり、私はこれが一番好きな味でした。いかにも高級なお米という味と食感でした。

井戸哲也様 普段当たり前いに食べている「お米」に対する知識不足を知ることができました。研ぎ方による違いがこんなにも大きいものだと実感し、とても貴重な時間でした。食べ比べについては3種のお米の個性がそれぞれにありました。千葉県産コシヒカリは一番癖がないものと感じ、魚沼厳選米は粒感を一番感じ重厚感がありました。私的には佃煮や漬物に合うあきたこまちがおいしく感じました。味噌汁や主菜とも食べてみたかったです。食に対しての気付きをいただきました。

石橋健夫様 こんなにおいしいごはんを食べたのは初めてです。炊き方ひとつでこれほどまでに違うとは感動さえ覚えました。中でも厳選米は、粒が燐としていて咀嚼のたびに甘みが広がります。おかずが要らないとはまさにこのことで、目を閉じて噛みしめてしまいました。お土産に新米を頂戴しましたので習った炊き方を自宅で試してみます。ありがとうございました。

秋葉由紀様 お米が美味しければ、おかずはそれほどいらないのだと改めて実感しました。糖質制限など、お米を摂らないでダイエットとかいわれていますが、力が入りませんし、その分ほかに油っぽいものや菓子類を食べてしまっている気がします。日本人はやはりお米ですね!バランス良くキッチリと、ごはんだけは美味しいものにこだわりたいです。炊き方やかき混ぜ方は早速やってみたいです。そしてまたあじたびサロンに参加したいです!

富岡卓也様 とても勉強になりました。炊き立てご飯のかき混ぜ方はなるほど納得で、すばらしい方法を教えていただきました。食べ比べはなかなか機会がないことですが、同時に食べ比べると違いが明らかで、どれが良い悪いではないですが、魚沼産コシヒカリ厳選米のおいしさが際立っていました。
あきたこまちは粘り・香りが少なく、少々の甘みを感じましたが粒にザラツキを感じました。千葉県産コシヒカリは香りが強く、粒はツルンとしていて口当たりは良いですが味はあっさりしていました。魚沼産コシヒカリ厳選米は香りは強くはなく、甘み・粘りが強い印象でした。粒も口当たりよくしっかりしていました。

渕脇良 主催側ですが今回のサロンは試食にも立ち会わせていただいたので感想を。西島社長においしいお米の炊き方を教わりましたが、今までの自分のお米の炊き方に誤りがあることが分かりました。お米の研ぎ方と炊き方でお米の味が格段に変わったので、週末にお米を炊く時は是非実践して、家族に美味しいごはんを食べさせたいと思います。ちなみに食べ比べの中で最もおいしかったのは手前味噌ながら「厳選米」でした。甘みが他のお米に比べて群を抜いていました。これからも自信を持って「厳選米」をおすすめしていきます。

 


総括

お米の研ぎ方から炊き上がりのかき混ぜ方を変えるだけで、ごはんがこれほど劇的に美味しくなるということを実感しました。

豊穣の秋の実りによって、黄金色に輝く稲穂から生まれるお米。
日本のお米は世界でもトップレベルの味わいで、お米を加工せずにおいしくいただくことができる国は日本だけかもしれません。

美味しいお米をたくさん食べて、お米の国に生まれた喜びを分かち合った今回のサロンでした。

 


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ご登録いただいた方は以下を考えています。

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・モニター・セミナー等への参加資格
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これらのイベントを通じて、皆様方とご一緒にシニア向けの美味しいメニューを考えて行きたいと思います。
専門家や識者のセミナー、生産者や料理人を囲む会、レストランで食する会、産地訪問の旅、など、楽しく学べるプログラムを考えます。
おひとりの参加者が多いですが、「食」という共通の話題が、初対面でもすぐ懇意になるような愉しい空間です。
会話も弾みますので、おひとりでも安心してご参加ください。
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