価格帯で選ぶ








ホタテ養殖発祥の地【北海道サロマ湖編】

枝幸を出て紋別で一泊。
翌日は紋別からサロマ湖へ向かいました。

サロマ湖は日本で三番目に大きい湖。そして海水と淡水が交じり合う汽水湖としては、日本一の大きさを誇ります。
この日は朝から快晴だったため、サロマ湖を一望できる展望台に向かうことに。
道中の山道を、息を弾ませながら展望台に登ると、サロマ湖が眼下に広がります
オホーツク海の青、サロマ湖の青、そして空の青。三種の青で彩られた眺望はまさに絶景です。


サロマ湖をしばし眺めた後、サロマ湖でホタテと牡蠣の養殖をされている今泉さんを訪ねました。

 

「せっかくサロマ湖までお越しいただいたのだから、養殖場所まで案内しますよ。」

そうおっしゃる今泉さんのご好意に甘え、船を出していただき、ホタテと牡蠣の養殖場所まで案内していただきました。
快晴のサロマ湖は風もなく穏やか。水面に照らされた陽射しがキラキラと輝いています。

10分ほど船を走らせ、今泉さんの養殖場所に到着。

養殖用のロープをクレーンで引き上げると、10cmほどに育ったホタテが鈴なりになってつながっています。

 

 

 

 


今泉さんがその中の数個をロープから取り外し、ナイフを使ってあっという間に剥き、貝柱とひもに分け、あじたびスタッフの前に差し出してくれました。

「どうぞ。食べてみてください」


促されるまま、獲れたてのホタテを口の中に運ぶと…

う~ん、しょっぱい。いや、甘い!

これはうまいっ!

 

小ぶりなホタテの貝柱はサクサクと小気味良い食感。

そして噛めば噛むほどに貝柱からあふれてくる甘み。

飲みこんだ後も甘みと旨みの余韻がいつまでも続きます。

 

 

「サロマ湖は、オホーツクの冷たい海水が入ってくるんで海水温が低いんです。だからサロマのホタテは道南のホタテに比べて大きくならないんですけど、海水温が低いことでホタテが生存のために、グリコーゲンというエネルギー成分を身体に溜め込むんです。

このグリコーゲンがホタテの甘みの元になっているので、サロマ湖のホタテは、他の産地に比べて甘みが強くて美味しいと言われています。

この海水温の低さは、人間もそうですが寒さで身体をちぢこませるために筋肉を使います。

それがこのサクサクとした食感につながっているんですよ。」

 

なるほど、この食感と甘みの元はホタテの生存本能から生じるものなのですね。サロマ湖のホタテが美味しい理由が良くわかりました。

 

 

続いて、牡蠣の養殖場所に案内していただきました。

牡蠣養殖というと、牡蠣筏(いかだ)をイメージしていたのですが、ホタテと同じように浮き球にロープで吊るして養殖をおこなっています。

「冬場、サロマ湖は凍結するんですよ。真冬は人が歩いて行けるほどの厚みの氷に覆われます。だから牡蠣筏は使えないんです。」

そうなんですね。でもそんな厚い氷に覆われたら船も出せませんよね。どうやって牡蠣やホタテを取るんですか?

「冬場は厚い氷が張るので、スノーモービルで養殖場所まで行き、チェンソーで氷に穴をあけて、ロープを引き上げます。ちょうどワカサギ釣りのようなイメージです。こんなやり方は、日本ではサロマ湖以外ではないと思います。」

冬場の引き揚げ作業。ちょっと見てみたい気もしましたが、冬場はブリザードが吹き荒れる道東の気候を考えると、寒さに弱いスタッフはそれだけで身震いしてしまいました。
ちなみに湧別は、夏には30℃を越えるそうですが、平均気温は5℃とのことです。
決して書き間違いではありません。

 

 

 

港に戻って、今泉さんのご自宅でお話を伺っていると、今泉さんのお父様がいらっしゃって、サロマ湖の養殖の歴史を教えてくださいました。

サロマ湖でホタテと牡蠣の養殖が始まったのは先代のお父様、今泉さんのお祖父様の頃。養殖が始まる前のサロマ湖周辺は産物が無く、人々の暮らしはとても貧しかったのだとか。
先代が養殖を始めたころは困難の連続で、傍らで見ていたお父様は、今でもその姿が目に焼き付いているそうです。

その後、養殖業を継承したお父様の代に、サロマ湖のホタテや牡蠣が全国的に有名となり、生産量も増え、現在三代目の今泉さんに事業を継承されているそうです。

サロマ湖の養殖の歴史、今泉家の養殖の歴史。聞かせていただきました。

ひとしきりお話を伺い、サロマ湖を後にするスタッフに、今泉さんが「これお土産です。持って行ってください。」と大きな発泡スチロールをポンと渡してくださいました。

 

車に乗り込み、発泡スチロールを開けてみると、中からたくさんのホタテの稚貝が!

「ありがとうございます!」と思いつつも、これから飛行機に乗り込む予定のスタッフが、どうやって飛行機に持ち込もうと思案しているところに、今泉さんから電話が。

「あ、すみません。稚貝だけ渡して肝心なこと忘れてました。中に氷入れてなかったですね。すみません。」

いや、今泉さん。肝心なことはそこではない気が…と思いつつ、ご好意をありがたく頂戴し、山ほどの稚貝は、帰り道に立ち寄ったお寿司屋さんで、お味噌汁と酒蒸し、バター焼きにしていただき、堪能させていただきました。