ごまかしのない本物の美味しさ【北海道:函館編】
龍野屋さんで松前漬けを買い込み、ネイビーブルーに染まる津軽海峡を右手に見ながら国道278号線を車でひた走ること2時間。
北海道の南の玄関口である函館へ到着。函館空港近くにある「タカハシ食品」さんを訪ねました。
タカハシ食品さんは北海道の海産物を使用し、昔ながらの直火炊き製法で無添加の佃煮を製造されています。
工場内に入るとずらっと並んだ釜が火にかけられ、醤油とみりん、砂糖が入り混じった良い香りが漂っています。
「現在では多くの佃煮メーカーが巨大な蒸気釜を使って調理をしていますが、うちでは創業以来、直火釜で佃煮を製造しています。焦げ付かないように、職人が長時間炊き上げなくてはならない直火炊きですが、直火だと熱が釜の側面に触れるようにして回るため、素材に旨味がしっかりと染みわたり醤油の香りが素材にのるので、蒸気釜ではできない深い味わいに仕上がります。」
そうおっしゃるのは四代目を担う高橋拓郎さん。
「ひとつの素材を少量でひと釜ずつ炊くと製造効率は非常に悪いですが、大量に炊くよりも素材に熱が均等に伝わるため、煮崩れがしにくく、味がしっかりと染み込みます。素材ごとに炊き上げることで味も濁らないですし。」
高橋さんから説明を受けている間に、従業員の方がニシンの甘露煮を用意してくれたので試食させていただく事に。
じっくりと炊き上げたニシンの表面は飴色に輝き、甘じょっぱい素晴らしい香りを放っています。
箸を入れると、スッと何の抵抗もなく切れてしまうほどの柔らかさ。
生ニシンの抜群の脂乗りと、きめ細かな身質は、身欠きにしんにはないふっくらした旨みがあります。
砂糖醤油ベースの調味液がしっかりと染み込み、ニシンの脂と調味液との味のバランスが絶妙!「う~ん、うまい!ご飯いただけますか!」と、思わず白米をおねだりしてしまいそうになりました(笑)
「もともとニシンの甘露煮はアメリカ産の原料を使っていましたが、『道産の生にしんを使って、本当に美味しい甘露煮を作りたい』と思い、原料探しから始めました。函館ではニシンが取れないため、知り合いの漁師さんのつてでオホーツク海産の脂乗りの良い生ニシンを仕入れることができました。調味液は化学調味料、保存料は使用せず、砂糖、醤油、みりんのみを使用したものを創業から30年間継ぎ足して使用しています。そのため調味液にニシンのエキスが凝縮されて、旨み豊かな膨らみのある甘露煮が出来るんです。」
脂乗り抜群の生ニシンですが、その脂乗りのために煮あがったニシンを鍋から取り出すのが一苦労なのだとか。1つ1つを手ですくって取り出すのですが、あまりに柔らかいため、ちょっと油断するとすぐ形が崩れてしまうそう。そのため、鍋から取り出す作業はベテランの工場長の仕事なのだそうです。
いただいたニシンの甘露煮の他にも、噴火湾産のホタテで作る『ホタテしぐれ煮』や北海道産の特大粒の新品種大豆:タマフクラを使った『大豆がごめ昆布』など、高橋さんの無添加佃煮の美味しさが口コミで広がり、都内屈指の料亭のおせちにも採用され、また、日本一陳列が難しいと言われる明治屋広尾店でも、推奨品ラベルが付けられ陳列されています。
いまや市販の佃煮の大半に添加物が使われています。
全体の色を調え、味を均一にして、早く柔らかく煮る。
そんな添加物の力を借りてつくられる佃煮とは一線を画す高橋さんの佃煮は、自然のうまみを引き出すために素材にこだわり、均一に煮るために時間も手間もかけています。
ホクホクと純朴ながらも滋味深い、のどを過ぎるときにはスッキリとした、ほっとする味わいの佃煮。
味にこだわればこそ、素材にこだわり、無添加にこだわり、つくり方にこだわっているのだと思います。
さぁ、次は400km離れた町へレッツゴー!