どうしてそんなに切ない顔をするの【北海道:えりも町編】
函館を出発し、次に向かうはえりも町。400kmを超える車の旅の始まりです。函館新道と一般道を乗り継いで大沼公園ICまで走り、大沼公園ICからは日高道の日高厚賀ICまで高速道路で、その後は国道235号線にてえりも町まで向かいました。
国道235号線は、通称浦河国道と呼ばれ日高地方の幹線となる道路。右手には太平洋の大海原が広がり、左手には緑の草原が広がり、馬が放牧されている姿も見受けられます。「果て~しない~大空と~♪」と歌っていると、えりも町の看板が見えてきました。
函館から実に6時間以上のドライブを経て、ようやく今回の目的地:入山佐水産さんに到着。
「函館から車で来たの!?うちらにとっても結構な距離だからね。内地の人には相当遠く感じたんじゃないですか?」と出迎えてくれたのは入山佐水産の佐藤社長。
佐藤さんはえりも町で40年間漁師を営む傍ら、襟裳の鮭をブランド化しようと東奔西走されてきました。
そんな努力の甲斐あって、襟裳の鮭の中でも3.5kgを超える大型の鮭は「銀聖」と呼ばれ、1匹1万円を超える高値で取引されています。
「せっかく来たんだから食べていってよ。」と差し出してくれたのが、銀聖の山漬けの焼き。
山漬けは江戸時代から伝わる鮭の伝統製法で、内臓を抜いた鮭と塩を交互に高く積み上げるところから「山漬け」と言われています。山のように積んだ鮭に重石を載せて、何度も上下を入れ替えることで、鮭から水分を抜き、旨みを凝縮させる製法です。
早速一口いただくと、これが実にうんまい!
山漬けと言われていたので、かなり塩辛い鮭を想像していましたが、銀聖を使った山漬けは一般的なものに比べてマイルドな口当たり。
「銀聖の脂で塩の角が取れ、マイルドな味わいになるんだよ。銀聖は特に皮がうまいから食べてみて」と言われるがままに皮をいただく…こりゃぁもう悶絶級のうまさ!
パリッと焼きあがった皮を噛みしめると、皮ぎしの脂から旨味がジュワ~っと染み出し、鮭の良い香りが鼻からスーッと抜けてきます。車でなければ…今回の旅路で何度も経験したもどかしい衝動が今回も襲ってきました。
「ここで揚がった銀毛を使った筋子もあるんだけど、こっちも食べてみてよ」
「!!」
いやいや、ただでさえ銀聖の皮で悶絶状態なんだから、この上筋子なんて食べたら…と心の中で葛藤しつつ、やっぱり箸を伸ばしてしまう食いしん坊のあじたびスタッフ。
一口食べて、いや~、こりゃもうダメですわ…反則です。
塩だけで熟成させた大粒の卵は、その粒の大きさからは想像できないほど口の中でとろっとトロけ、皮をまったく感じないほどなめらか。濃厚な卵の味わいが広がります。
日本酒があったら最高だろうな~うまいだろうな~などと考えながら、そこは我慢ガマン!
松前~函館~襟裳を巡る道南の味の旅は、ごはんのお供に、酒のアテに最高の食材が揃った味の宝庫でした。
同時に、あじたびスタッフに鉄の精神力を身につけるための修行の旅でもありました(笑)
追記:
せっかくえりも町まで来たので、襟裳岬にも足を延ばしました。襟裳岬は日高山脈が太平洋に沈む突端だそうで、延長線上に岩礁地帯が続いていることからも実感できます。
襟裳岬と言えば何と言っても歌!襟裳岬には、森進一の「襟裳岬」と島倉千代子の「襟裳岬」の二つの歌碑があります。
多分、ここに来た人で10人中7~8人は、「えり~もの春は~♪」と歌っているに違いありません。そしてその内、少し切ない顔を取り入れる人は5人はいるはず。
風速10mを超える強風の中、やっぱり「えり~もの春は~♪」とリフレインが止まらないあじたびスタッフでした。
もちろん少し切ない顔も取り入れて。