たった一年で丸々と【兵庫:室津編】
丹波篠山で秋の味覚を堪能したあじたびスタッフ。今度は冬の味覚を求めて、瀬戸内に向かいます。
山道から山陽自動車道に入り1時間半ほど車を走らせると、冬のやわらかな日差しを受けてきらめく瀬戸内海が姿を現します。
「室津七曲り」と言われる風光明媚なリアス式海岸を走ること10分ほどで、今回の目的地である「住栄丸」さんに到着しました。
住栄丸さんは森林や清流に恵まれた上質な水を誇る室津湾で、品評会で日本第3位に選ばれた、抜群に美味しい牡蠣を養殖されています。
早速生産者の津田さんに室津の牡蠣の美味しさをうかがいました。
「室津港がある播磨灘一帯は海水に養分が流れやすい地形にあります。千種川と揖保川という2つの大きな河川が運んできた、山のミネラル豊富な栄養分により、室津の海には海水が濁って見えるほどの植物性プランクトンが発生します。その豊富な植物性プランクトンを餌に育つ室津の牡蠣は、通常出荷までに2~3年かかるところ、一年で出荷ベースに乗るくらい丸々と太ります。」
「一年で出荷できるため、排卵の機会がほぼなくなることで身が大きくなること。その上加熱しても縮みにくいというメリットもあり、味も食べごたえも良くなります。うちの牡蠣はコクと旨味がありながらもくせがなく食べやすいので、今まで牡蠣が苦手だった方がファンになる事も多いです。まずは牡蠣棚までご案内します。」
津田さんの船に乗り、10分ほどで牡蠣棚に到着。牡蠣筏の一つ一つに日付がつけられていて、これはいつ出荷して良いかを記載しているのだそうです。
「ここの牡蠣は筏を移動させてから数日しか経っていません。海水が濁っているでしょう?それだけ牡蠣の餌となるプランクトンが豊富なんです。」
言われてみれば確かに海水が濁っていて、水深1mほどしかよく見えません。
その後、2~3分ほど船を走らせ、次の牡蠣筏に到着。
「ここの牡蠣は移動させてから1週間くらい経ちます。海水を見てみてください。」
言われるがままに海を覗くと、今度は水深5mくらいまではっきりと牡蠣が吊られている姿が確認できます。
「牡蠣は1日に400リットルもの水を浄化すると言われています。海水に含まれる養分を吸収して育っていくので、養分が多く含まれる海水ほど大きな身をつけて成長します。これが室津の牡蠣が一年で大きくなる理由です。牡蠣が大きくなると同時に海水が浄化されるため、最近では赤潮が発生しなくなりました。」
豊富なプランクトンが牡蠣に吸収されることにより、牡蠣は大きくなり、海は透き通る。新しい環境循環が瀬戸内に広がっているんですね。
「お待たせしました。それでは牡蠣を召し上がってください。」と言って津田さんが持って来てくれたのは、バケツ一杯の殻牡蠣。早速、牡蠣ナイフで殻を剥くと、殻の縁までぷっくりとした身がパンパンに詰まっています。一口でチュルンといただくと、生きてて良かったフレッシュ感!牡蠣の旨味が濃厚で、貝柱の甘みも強く、甘みの余韻がいつまでも続きます。
「室津の牡蠣は焼いても縮まないので、焼き牡蠣や蒸し牡蠣もおすすめです。今回はちょっと趣向を変えてアヒージョを作ってみたので、召し上がってみてください。」
沸々とオリーブオイルがたぎり、ニンニクの香りを漂わせて牡蠣のアヒージョが登場。アツアツの牡蠣をいただくと、熱を加えることで増した牡蠣の甘みと旨味がオリーブオイルとニンニクの風味と良く合い、もう最高の味わいです。
瀬戸内の栄養がたっぷりと詰まった美味しい牡蠣をたらふくいただきました。
追記:
津田さんの所でさんざん牡蠣をいただいたのですが、他にも室津の海の幸を堪能したい欲張りスタッフは、1700年の歴史を誇る室津漁港へ向かいました。
車一台がギリギリ通れるかという狭い道を抜け、たどり着いたのが地元の割烹「まるよし」さん。昭和44年の創業から、ここ室津の港で揚がった地魚を中心に、天然物にこだわった仕入をされているお店です。
お店にはいると、中には生け簀があちこちにあり、その中を魚が泳いでいます。
注文が入ると大将が板場から網を持って生け簀の魚をすくい、その場で捌いてくれるという嬉しいサービス。
室津の漁港で朝仕入れた天然活魚を使った料理は、天然ならではの食感と上品な旨味があり、どれも素晴らしい味わい。イイダコの柔らか煮は、噛めば噛むほどに味が口中に広がり、地魚のお造りは天然物だけあって歯ごたえが抜群。噛みしめるたびに旨味が溢れだします。
室津の海の幸を堪能させていただきました。